【Vol.42】桐朋との繋がり – 矢島 愛子さん 後編-

ゲスト    :桐朋学園初等部 36期 矢島愛子様(以下、矢島さん)
インタビュアー:桐朋初等部同窓会 会長 髙田紀世(以下、髙田)

 

矢島愛子さんとのインタビューの後編です。
前回のインタビュー<前編>はこちら

髙田:
矢島さんご自身は、中学高校で部活はされていたのですか。

矢島さん:
私は帰宅部でした。
中学に入った時に、学年主任だった山下伸子先生から、ここは好きなものを好きなだけ打ち込める環境だから、ピアノに好きなだけ打ち込んでね。って言っていただいたんですね。私は部活には入らなかったけれど、合唱班のコンサートの時に伴奏に来てほしいっていうふうに言っていただいて、中学3年生から毎年、定期演奏会に伴奏で一緒に参加させていただきました。2つ違いの妹が合唱班だったので、高校1年と高校3年で初めて姉妹でも共演ができ、今でもたまに思い出しては、いい時間だったなって思ったりします。

髙田:
いいお話ですね。部活に入っていてもいなくても、色々な関わりや経験ができるのは桐朋のいいところですよね。そしてそれがあるから、年齢関係なく会うと同じ桐朋っ子になりますよね。

矢島さん:
本当にそうなんですよ。高校生の頃、制服着て電車に乗っていたら、知らないお姉さんに突然何色?とかって話しかけられたりして。色の話しで意気投合して仲良くなっちゃったり。

髙田:
同じ匂いがするっていいますよね。

矢島さん:
今、日本女子大で教えてるんですけど、今年受け持った生徒さんが、私の通ってた高校は、音大もある学校の普通科だったんです。って仰るので、どこですかって聞いたら桐朋ですって。もうすっかり仲良しになっちゃっいました。何色?とか、文化祭行った?とか、もう、一瞬で仲間になれちゃうすごいパワーがありますよね。桐朋は。

髙田:
素敵な繋がりがいっぱいありますね。今後ピアニストとしてまた人生を歩んでいく中で目標はありますか。

矢島さん:
男女間で差がない世の中にしようっていう方向になってきていますけれど、やっぱり女性って結構大変だと思うんですよ、今でも。10歳とか20歳年上の先輩から、女性の30代はすごい大変だっていうふうに以前言われたことがあります。30代は結婚したり子どもを産んだり、様々なライフイベントがあります。

今は以前に比べて子育ての環境が整ってるとは言われているけれど、やっぱり大変なのは変わりないと。早い人は親の介護も始まり、30代になると音楽活動を続けられなくなる人が多いんだ、と言われたんです。実際私が今40代になって周りに見渡してみると、ステージの上でピアノを弾いている同級生はとても少人数で、もしかしたらもう10人に満たない位です。同じ大学で学んでいたのに。

ただ、30代をうまく乗り切れたら、そこから先は一生弾いていけると思うから、30代はどんなに辛くてもとにかく頑張るようにって言ってくださった先輩がいたんですね。私自身も、結婚して1年もしないうに主人の母が介護状態になり闘病生活を送る中、出産して子育てして、ピアノを弾き続けるのがとても苦しい時期もあったんです。でも応援してくださる方々のおかげで、何とか弾き続けることができました。40代を迎え、息子が中学に入ったら子育ても落ち着きますので、自分のやりたいことをやっていこうと、ようやく決めたところなんですね。

数年前にコロナ禍になり、音楽家の仕事は激減しました。初めて、1年間も演奏の仕事がないっていう状況になりました。私の家は医院と自宅が併用の住宅なんですね。私は3階に住んでいて、1階と2階が病院なんですけど、病院は人手が足りなくて、もう受付もてんやわんやでした。私は経理をやっているだけで表には出ていなかったのですが、人手が足りないので受付に出るようになり、毎日午前中スタッフとして働いていたんですね。そしたら、社会的援助が必要な方とか、心が疲れていて救いが必要な方にたくさんお目にかかりました。

私ができることって何かなって考えたときに、ピアノしか弾いてこなかった私は、人の心に音楽を届けたいと考えるようになりました。それで「100万人のクラシックライブ」っていう財団法人と協力しながら、学校コンサートに行ったり、老人ホームに行ったりしています。コロナ禍の時には屋内で演奏ができなかったので、駅の中で演奏したり、屋外ステージに行って弾くとか、そういう活動するようになったんですね。そうすると足を留めてくださった方々から、すごくよかったとか、癒されましたとか、そうやって言ってくださることがとても多くて、私も音楽を通じてお役に立ててるんじゃないかなって思うようになったんですね。

今やってるこの活動をもっともっと広げていって、日本中の人に音楽を届けられるような、そして普段クラシック聴かない人でもクラシックっていいな、意外と敷居が高くないんだな、身近なんだなって思ってもらえるような、そういう活動をしていきたいなっていうのが、今一番目標にしていることです。

髙田:
素敵な目標ですね。
クラシックはみんながどこかで聞いたことがある曲がたくさんあるので、それを耳にすると、ふっと心が和らぐ気がします。

矢島さん:
駅の中とか、スーパーマーケットやデパートの中でもかかってるBGMってクラシックが多いんですよね。なので、意外と身近にあるんです。私のしている活動が、クラシック音楽への入り口になったりするといいなと思うんですね。音楽ってすごく人の心に寄り添うものだと思いますし、そうやって発展してきたものだと思いますので、1人でも元気になっていただけるといいなと思います。

髙田:
これからの矢島さんの活動が楽しみです。近々イベントがあるようなら教えてください。

矢島さん:
1月は、28日に大学の同級生のヴァイオリニスト、永井公美子さんと、埼玉県の和光市文化振興公社主催のコンサートがあり、和光市民文化センターサンアゼリア大ホールで弾かせていただきます。
2月13日は、大田区の大田文化の森にて、永井公美子さんと「愛」をテーマに演奏させていただきます。

4月14日には、赤羽岩淵のモーツァルトサロンで、同じく永井さんとデュオコンサートがあり、ブラームスのソナタ「雨の歌」等を演奏致します。また5月3日に烏山文化会館で私の師匠であるペトルシャンスキー先生と連弾のコンサートがあります。

髙田:
どれもとても楽しみですね。是非桐朋の同窓生、在校生の皆さんに足を運んでいただけたらと思います。最後になりますが、桐朋の同窓生たちに向けて何かお言葉をいただけますか。

矢島さん:
自分らしさ、自分の個性を大事にしてほしいと思います。
自分の発言を思い切ってするって難しいときもあると思いますが、自分の信念を曲げずに、思っていれば夢は叶うと思いますのでぜひ諦めないで突き進んでいただきたいと思います。

髙田:
今日はお忙しい中どうもありがとうございました

矢島さん:
ありがとうございました。

【矢島愛子さんの詳細情報は下記URLよりご確認ください※別サイトへリンクします】
▼矢島愛子さんのコンサート情報:https://www.aikoyajima.com/Information/top.html
▼月刊ショパンの紹介:https://www.chopin.co.jp/media/chopin_backnumber/a5529

次回、卒業生のインタビュー記事は<2024年4月1日>に予定しています。

こちらのページでは、先生や卒業生の近況、また桐朋生にとって懐かしい方々を紹介いたします。
桐朋学園初等部同窓会は6,571名(2021年度3月時点)の会員から構成され、卒業生間の親睦と母校への貢献を目的に活発な活動をおこなっています。
卒業後も桐朋の教えをもつ仲間として、深い繋がりをもっていることが桐朋学園初等部同窓会の特徴です。

同期生同士の横の繋がりだけでなく、クラブ活動や課外活動等によって形成された先輩・後輩の縦の繋がりは、社会人になってからも大きな心の支えとなり、様々な場面で活かされ、その関係は一生のものとなっています。

「桐朋との繋がり」をきっかけに、更なる同窓生の交流が深まるよう、これから繋がりの深い方々を紹介していきます。