【Vol.50】桐朋との繋がり – 48期 新宮 有香子さん 後編-

ゲスト    :桐朋学園初等部 48期 新宮 有香子様(以下、新宮さん)
インタビュアー:桐朋初等部同窓会 会長 髙田紀世(以下、髙田)

 

新宮有香子さんとのインタビューの後編です。
前回のインタビュー<前編>はこちら

髙田:
憧れのキャッツの舞台にたてるようになり、最初に抜擢されたときのお気持ちをお聞かせください。

新宮さん:
受けていただいたのは、 入団できてからの1 年間のときのオーディションでした。
そっからコロナがあり、あと他の演目に出なきゃいけなかったりでなかなか舞台に立てなかったです。

キャストに入ってもお稽古しないと出れないので、受かったのは早かったんですけど、出るまでが4年ぐらいかかってしまって、ようやく去年の5月に名古屋で舞台に立てました。死ぬほど緊張しましたけど、受かってすぐ出るより、何倍も嬉しかったな。

髙田:
新宮さんはキャッツのジェミマという若いメス猫の役をやっていらっしゃいますが、この配役はどのように決めるのですか?また演じてみての印象を教えてくだい。

新宮さん:
自分でやりたい役を受験のときに表明します。実は自分ではあんまり合ってないなって最初は思っていて、でも、すごく年齢的には合ってる役で、若い猫で表情豊かなキリッとした面もあれば、すごく甘えたりとか、他の猫と遊んだりとか、そういうところがある猫なので、合っているんだなって出始めてから思いました。

髙田:
猫の動きとかを勉強するのですか。

新宮さん:
します。
猫を見ているとかわいいじゃないですか。けどあんまり野生の猫ってあんまり見れないじゃないですか。野良猫の役なので、YouTubeとかでネコ科の動物の映像を見て、トラやヒョウとかの動きを見て、肩の動きとか、床から手が離れるときの動きとかを観察して、それを稽古場の鏡でずっと練習してっていう感じです。

髙田:
キャッツに出ている皆さん、本当に猫そのものです。このお仕事の魅力について聞かせてください。

新宮さん:
そうですね。魅力かぁ。
自分も辛いなとか、嫌なことがあったりとか悲しくなったりとか、そういうときに四季の舞台に限らず、お芝居で元気をたくさんもらってきたました。同じように自分がお届けできているかは、ちょっとわからないですけど、いい作品とか、お芝居の中の素敵な言葉、セリフとか、そういうものに触れてることが、すごい幸せだなって自分では思っています。

言葉を元にしている職業なので、歌も言葉から来ていて、それが、何かの感情でテンションが上がって、歌になるみたいなものが多いので、すごく言葉を大切にしたいなって日々思っています。

言葉っていうのは役者さんによって、同じ言葉を言っても、意味合いが変わってきたりとかすると思うんですけど、良くも悪くもどういうふうに生きてきたかみたいなものが、全部言葉に乗るので、怖いなと思いつつも、何かを自分がいいなとか、信じているものをまっすぐ言葉を伝えるっていうことを、日々やれていることが楽しいなと言葉を大切にこれからもしていきたいなって思います。

髙田:
ご自身が大切にされているもの表現していくということなのですね。
だから四季の歌は心に刺さるのですね。

新宮さん:
ありがとうございます。頑張ります。

髙田:
今までの人生の中で、桐朋教育ここが役に立ったなというところはありますか。

新宮さん:
桐朋小学校の頃もそうでしたし、中高でも、すごく感じてたんですけど、ひとり一人の個性をすごく大事にする学校だなって感じてて、どんなことをしても、先生がいけないとか、言ったりせずに、良かったことは褒めてくださるし、自分ひとりで自主的にやったことに対して、すごくお話を聞いてくださったりとか、勉強以外の部分で、個性を伸ばしてくださったなっていうのをすごく思っています。

バトンにしても、完全に学校の外でやっていることでしたけど、頑張っていることの話を先生がすごく聞いてくださったりとか、よかったねって、言ってくださったりとか、先生と生徒ひとり一人が繋がっているなっていう感じがしていました。自分が好きなことに集中できるってことや人と比べないっていうことが自分の中で培われてたんじゃないかなと、思っています。自分がやっていることが大好きなら、他の人がやってることはすごく尊重できる先生がひとり一人を大切に、個性を伸ばしてくださったことが、私にすごく活きているなと思ってます。

今職場ではオーディションが毎月あって、人と比べるっていうのがすごく多い職場なんですけど、劇団四季の浅利慶太先生の「他の人の時計を見るな、自分の時計を見ろ」っていう言葉があって、その言葉で桐朋に通っていたときのことを思い出して、自分は自分でいいんだな。と、他の人も自分の時計を進んでいるから、比べるものじゃないんだなっていうのを仕事をしてても、自分が役を取れなかったときとかも、そういうふうに考えて救われてます。

髙田:
桐朋教育でも今も“比べない”というスタンスだから、ご自身の才能を花開かせられているのかな?と感じました。お仕事していて、これは楽しいなと思うことと、逆にこれはつらいなと思うことを教えてもらえますか。

新宮さん:
そうですね。
辛いことだとオーディションに落ちることは辛いんですけど、一番つらいのは自分が出ている舞台で、自分ができるパフォーマンスがしきれなかったときが悔しくて、せっかくお客様が来てくださって、同じ1回なのにそれが出来なかったなって感じるときは、どうにも時間を戻せないし、返すことのできないものなので、結構落ち込みます。でもそういうものがあるからやっぱり日々頑張らなきゃなって思ってます。

楽しいなと思うことは、舞台に立てていること自体がすごい楽しいな。って毎日舞台に立って、お客様にその作品を届けるっていう役目があることがすごく楽しいですね。

髙田:
長い公演期間中で自分のモチベーションを保つためや、パフォーマンスを良くするために、心掛けていることややっていることを教えてください。

新宮さん:
体力的なことでいうと、早く寝るとか、怪我に気を付けるとか、筋トレする。ストレッチする。あとは、寝る前にビタミンを取ったりとかです。モチベーションでいうと、自分が舞台を見に行ったときのことをよく思い出していて、小学生のときを特に思い出すんですけど、そのときって携帯もガラケーで、動画とかも見れないじゃないですか。

劇団四季のホームページも、家に帰ってパソコンを開かないと見れないって時代でした。
今日見に行こうっていう日になると、その日の一日が楽しくて、劇場に行って席に着いて、始まる前の緊張してる雰囲気とか、オーケストラが音を合わせてる空気とか、すごいわくわくしたなっていうのを思い出すと、自分がやるこの1回も、もしかしたら職業とか、俳優さんとか、舞台の仕事を夢にするかもしれない子が来てるかもしれないから、そういうことを考えたらやっぱり今日も頑張らなきゃいけないなって思っています。

舞台は作品をまっすぐ届けなきゃいけないので、歌は失敗できないですし、お客様の何がどこに引っかかって、感動していただけるかってやっぱりわからないので、どのシーンも質の高いものを届けられるようにと思って、自分の小さいときをよく思い出しています。

髙田:
夢を届けるお仕事ですね。

新宮さん:
そうですね。次は自分が届けられるように頑張りたいと思います。

髙田:
これからの予定を教えていただいていいですか。

新宮さん:
8月から大阪の四季劇場でウィキッドという作品を上映するんですけれども、それに出演させていただきます。来年の7月ぐらいまで1年間ぐらい結構長い間やるんですけど、結構難しい作品ではあって、良い魔女と悪い魔女のお話で、友情とか、愛とか、権力とかいろんな大人な問題が、たくさん詰め込まれている作品なんですけど、そういう作品も変わらず人生は生きるに値するというメッセージを届けられるように頑張りたいと思います。

髙田:
最後に、これからの若い同窓生に向けて何かお言葉をいただけますか?

新宮さん:
はい。私もまだまだ夢を追っている段階ですけど、小学校の6年間ってすごい自由で、貴重で何でもできる時間だと思うんです。その期間を存分に自主的に自由に桐朋で活動できるっていうのは、すごい今の自分にとっては幸せなことだったなと思うので、興味のあること、好きなことは、もう存分にやってほしいと思います!

髙田:
今日は、お忙しい中ありがとうございました。
これからのご活躍を楽しみにしています。

新宮さん:
ありがとうございます。

次回、卒業生のインタビュー記事は<2024年12月1日>に予定しています。

こちらのページでは、先生や卒業生の近況、また桐朋生にとって懐かしい方々を紹介いたします。
桐朋学園初等部同窓会は6,784名(2023年度3月時点)の会員から構成され、卒業生間の親睦と母校への貢献を目的に活発な活動をおこなっています。
卒業後も桐朋の教えをもつ仲間として、深い繋がりをもっていることが桐朋学園初等部同窓会の特徴です。

同期生同士の横の繋がりだけでなく、クラブ活動や課外活動等によって形成された先輩・後輩の縦の繋がりは、社会人になってからも大きな心の支えとなり、様々な場面で活かされ、その関係は一生のものとなっています。

「桐朋との繋がり」をきっかけに、更なる同窓生の交流が深まるよう、これから繋がりの深い方々を紹介していきます。