【Vol.2】桐朋との繋がり -中村 博先生<後編>-

ゲスト    :中村博 校園長先生 (以下、中村校園長先生)
インタビュアー:桐朋学園初等部同窓会 会長 坂口佐代子 (以下、坂口)

 

中村校園長先生へのインタビューの後編です。

中村校園長先生:

他のこともお話させてください。在学中に、車椅子の生活になってしまった子がいたんです。
1.2年の頃は毎日遅くまで遊んでいて、遊ぶのも学ぶのもその時その時を精一杯生きている子だったんですね。その子が、突然入院せざるを得ない。長期間入院して車椅子の生活になってしまったことがあったんですね。

その子が退院した時に、車椅子で生活、学習をする環境にない桐朋小学校でした。辛いことですが、別の学校の方がその子にとってよいのではないかとも考えました。その子はこの桐朋小学校でみんなと共に、また私たち教員と共に成長していきたいんだっていう気持ちをすごい強く持ち、そしてそれをご両親が受け止めて、是非ということで、我々が最大限その子とまたその学年の子どもたちにできることはなんなのかって、考えて出来ることを保護者の方と協力しながら支えるっていうことをしてきたんですが・・・。

毎日毎日を楽しく精一杯生きてた子が、突然車椅子で生活せざるを得なくなったこと、そしてこの学校を卒業していきたいと言って、本当に苦労したと思うんですけど、その子はこの学校でみんなと共に卒業して行くんだっていうのです。すごい頑張って生活してそれは素晴らしいなって思っているし、周りの仲間たちが支えたんですね。当時を振り返って、「大人はシリアスに考えるけど、子どもの方が壁がない。野球では『〇〇ちゃんは車椅子だから半分まで走ったら1塁ね』と独自ルールを作ってくれて一緒に遊んだ。今でも会うとみんな自然に車椅子を押したり、手伝ったりしてくれます」と言ってくれました。それがとても嬉しくて、本当に子どもたちはすごいなと思って一緒に生活できたことを誇りに思っています。

その子は、この間取材されていて、小さい頃から現在までの話をされていました。当時、仲間や先生達が支えてくれて自分が卒業できたこと、一番はご両親への感謝を語っていらして、そのお話を聞いたことが嬉しかったのでした。この園・学校は一人ひとりが成長していくために、最大限教員が手を取り合って支えて行こうという熱い想いというか、願いを持って子どもと関われて教育が進められているっていうところが私はとても好きなところです。

その子は、小学校時代仲間に支えたこと、先生達に励まされたことがすごく今も生きる上で支えになっていると言ってくれていました。

中村校園長先生:
もうひとつよろしいでしょうか。
失敗ばかりの担任時代、ある子から言われたことです。
子どもたちとの日々の中で、そこで子どもと過ごすということを大事にしたいなと当時も今も思っています。そのひとつに、子どもたちの誕生日は特別なお祝いの日としていて、私なりのプレゼントをしたいなと思って実際に行っていたんです。

例えば、抱きかかえてぐるぐると回って誕生日のお祝いにする、肩車をして教室をぐるっと歩き回るなど、いくつかお祝い行事があり、誕生日の主役の子に選んでもらっていました。その子の誕生日を忘れてしまったことがあったんですね。

その日、私は気付かなかったんです。その子は一日悲しい思いをして過ごし、次の日になってそのことを日記帳で知らせてくれたんです。悲しかったっていう気持ちにさせてしまい申し訳なかったと思って、謝ったのですけれども。一人ひとりの子どもを大事にしようという気持ちはすごく強く持っているものの、実際にはそういうことが出来ていなくて、その子に悲しい思いをさせてしまいました。この時は、日記で本心を伝えてくれて、本当に申し訳ないっていう気持ちを伝えることができました。とっても悲しいと言ってくれた裏側には、そのことを楽しみしてくれ、待ってくれているんだなってあらためて思って、そういうことを忘れてはいけないことだなと教えられたのでした。

このようなことが、子どもから教えられたり、私の中では心に残っていることで、うちの学校でよかったなと思うことです。

坂口:
どれも素敵なお話をありがとうごいました。
先生の教え子たちはとても幸せだったんだなと、当時の状況が浮かんできました。

教え子たちも卒業し社会に出て、ご活躍されているかと思います。既に社会で活躍されていたり、これから活躍される桐朋っ子に向けて一言をいただけますでしょうか。

中村校園長先生:
桐朋で過ごされた方が、自分の人生の主人公として、社会の主人公として、いろんなところでご活躍されているお話はたくさん聞いています。
先日も、桐朋出身でない方から聞きました。同僚に桐朋出身の人がおり、その方は本当に患者さんのことを大事にし、患者さんの気持ちに寄り添いながら、医療を行っているっていうことを具体的に話されました。

また、一生懸命ものを考えるっていうことを桐朋の教育の中で学んできた方たちがされているって言う話などもを聞きます。

やっぱりこの桐朋学園の「ヒューマニズムに立つ『人間教育』」というのがあるから、そうなんだろうと思い、素晴らしいなと感激しました。

この学園で過ごされた方は、学園の教育理念である「一人ひとりの人格を尊重し、自主性を養い、個性を伸長する」ということをどの学校でも大事にされ、友達を支えているっていうことがあると思います。そうしたことが社会の主人公として生きる力になっているんじゃないかな、この学校はいいなと思うことが多いです。

私はそうした声を聞いて、この学園を過ごされてきたことが、社会できっと活かされて、一人ひとりの方がご活躍されている。そういうことを聞かされた時に、励まされます。

坂口:
沢山のお話をありがとうございました。
先生の熱い想い、お伺いできて本当に光栄です。ありがとうございます。

さて、中村校園長先生に次回の先生をご紹介頂きたいのですが・・・

中村校園長先生:
最後に、この場をお借りしてお礼を言わせてください。
昨年度で小学校の卒業生の総数が6049名でした。

本日持ってきたのですが、幼稚園の2018年4月から始まる3年保育で使わせて頂く3才用のイスなんですね。こちらは毎年の同窓会の寄付から購入させて頂きました。本当に卒業しても同窓会の皆様に支えて頂けていることは感謝申し上げたいと思います。ありがとうございます。

坂口:
タンポポ組さんのイスですか?

中村校園長先生:
そうです。タンポポ組さんで使わせて頂きます。

次回、宮原洋一先生をご紹介したいと思います。
宮原先生は2018年度の3年保育を始めるにあたって、ここ2年間、子ども達と保育の写真を桐朋幼稚園に入って撮り続けてくださっています。また武藤先生、藤尾先生がボランティアで入ってくださるなど多くの先輩たちが支えて下さっているんですね。

坂口:
ありがとうございます。次回は宮原先生にお話をお伺いしたいと思います。
本日はありがとうございました。

中村校園長先生:
本日はありがとうございました。

 

次回は宮原先生にインタビューをして、色々なお話をお伺いしたいと思います。
次回の掲載は<1月20日>に予定しています。

こちらのページでは、先生や卒業生の近況、また桐朋生にとって懐かしい方々を紹介いたします。
桐朋学園初等部同窓会は6,094名(2017年度3月時点)の会員から構成され、卒業生間の親睦と
母校への貢献を目的に活発な活動をおこなっています。
卒業後も桐朋の教えをもつ仲間として、深い繋がりをもっていることが桐朋学園初等部同窓会の特徴です。

同期生同士の横の繋がりだけでなく、クラブ活動や課外活動等によって形成された先輩・後輩の縦の繋がりは、社会人になってからも大きな心の支えとなり、様々な場面で活かされ、その関係は一生のものとなっています。

「桐朋との繋がり」をきっかけに、更なる同窓生の交流が深まるよう、これから繋がりの深い方々を紹介していきます。