【Vol.30】桐朋との繋がり -21期 藤 明里さん 後編-

ゲスト    :桐朋学園初等部21期卒 藤明里さん(以下、藤さん)
インタビュアー:桐朋初等部同窓会 会長 髙田紀世(以下、髙田)

 

藤明里さんとのインタビューの後編です。
前回のインタビュー<前編>はこちら

髙田:
今までのフライトの中で一番印象に残っているフライトを教えてください。

藤さん:
印象に残ってるフライトですか。難しいですね。
というのも色んなケースで印象に残っているフライトはあるので、今回は教育関連なのでそのケースで言うと、あるお客様に声をかけられたお話、お嬢様が小学生でパイロットになる夢をお持ちだったそうです。今回お母様だけ搭乗されてて、機長が女性ということでびっくりしながら話を聞きたいと。なぜかというと、お子さんがその夢を学校で話したら先生に「女性はパイロットになれないんだよ。」って言われたらしくて、女性パイロットがいるではないか!と驚いたそうなんです。私の方が今時そういう先生がいるんだっていうのにびっくりでした。

降機した後にそのお母さんのところに行って、女性でもパイロットになれるので、諦めさせないでくださいとお話ししたらすごく喜んでくださって。だからそういった何かちょっとしたインパクトとか手助けになるものを与えられるっていうのは嬉しいことだし、印象に残ります。自分の中で、このフライトして良かった!という瞬間です。

髙田:
パイロットは何百人の人の命を預かる仕事だし、プレッシャーも半端がないものだと思います。でも私は空港で歩いてるパイロットの方の姿は格好いいし、その姿も色々な人に夢を与えられる仕事だと思います。

藤さん:
ありがとうございます。そうありたいなって思います。
たまに制服をちょっとだらしない感じで着ている男性後輩とか見かけると注意します。
一応夢を売る仕事でもあるので、ターミナルではピシッと着てね。って言っています。

髙田:
憧れの職業であるパイロットの方をターミナルでお見かけしてピシっとしてない姿だとちょっと残念ですね。

藤さん:
なんか嫌じゃないですか。ジャケットがヨレヨレだったりすると。

髙田:
そうですね。
パイロットはお客さんを運ぶだけではなく、その人たちの想いも一緒に運んでいく仕事だと思うので、素敵な仕事だなといつも思ってます。

藤さん:
ありがとうございます。

髙田:
ご自分のフライトの時に一番気をつけていることって何かありますか?

藤さん:
フライトの時に気をつけていることですか。
天気が悪い時は負けないようにしなきゃっていうのはありますね。
いろんなものが降りかかってくるので、気持ちで負けちゃうと意外と失敗に繋がるんですよね。
もうこれでいいかな、みたいなちょっとした妥協的なことを考えると、本当に神様って見てるかのように失敗させてくるんで、そこだけはちょっと気をつけて自分に負けないようにと仕事してます。

髙田:
桐朋魂ここにあり!というお答えですね。
これからパイロットなりたいって思っている子たちに向けて、パイロットになるために必要なことはなにかとお考えですか?

あとは、今パイロットになるために必要なことで何かありますか。
若い子たちがこれからパイロットなりたいって思っている子たちに向けて。

藤さん:
そうですね。今言った桐朋魂ではないですけれども、負けないことっていう気持ちですかね。

結局自分に負けないこと。それってどの仕事でも同じなんですよね。
自分に負けちゃうと、どうしてもどこかで引っかかったりとか、挫折しちゃったりとか、今挫折しても別に気持ちが負けなければ、また前に進めるんで、失敗してもいくらでもやり直せるっていうところ。だからそういった、まず失敗を恐れない気持ちと、いくらでもやり直せると思って前に進む気持ち。

パイロットに必要なポイントとして、健康体ってというのも基本的には必要なので、体が元気であること。気持ちで負けなくて、体が元気であれば、特に他にいらないかなって思います。

髙田:
それは、まさに心の健康。体の健康ですね。

藤さん:
そうですね。

髙田:
今後もまだまだパイロットもインストラクターも続けていくと思うのですが、今後の目標は何かありますか?

藤さん:
今後の目標ですか。
どっちかというと、もう今は終活を考えなければならない年齢なので難しいんですけども、今後の目標というか、今訓練部にいるので、この仕事がものすごく楽しいものであるというのをパイロットの訓練生たちに教え、そしてより多くの人達に知ってもらって、そういったパイロットになろうとしてる人たちが、この仕事に就いてよかったって思えるように育てられることが目標ですかね。

髙田:
仕事が楽しいっていうことを伝える方法があれば教えてください。

藤さん:
結局、訓練とかでフライトとかで一緒に乗ったりとか、シミュレーターという機材で訓練を教えたりとかっていうところでの楽しみ方ですかね。

「訓練」って言うと、その言葉だけで辛いんじゃないかってなっちゃう人もいるので、そうではなくて、フライトという仕事にはこんなに楽しいことがあるから、楽しいことを見つけられるとか、そういったいろんな発見をなるべくさせるようにする。

そういったきっかけ作りを、なるべくコミュニケーションをとって伝えて、これってどう考えるのかのヒントをあげてみたり。本人がそこで気付けば、それはまた楽しさのひとつになってくると思うので、それを心掛けています。

髙田:
素敵なパイロットがいっぱい育っていくようなお話をありがとうございます。
話がそれますが、飛行をしていて離陸が難しい空港と着陸が難しい空港はありますか?

藤さん:
離陸が難しい空港ですね。今、国内線しか飛んでいないんですけども、どこが難しいかな。
難しさの種類がいろいろとあるんですよね。

例えば、羽田とか成田だと非常に混雑した空港で、混んでいるとトラフィックが他に沢山いるので、外部監視や無線での指示、いろいろそういったところで気を遣うものがあるので難しいって思いますし、あとは例えば短い滑走路の空港、先日行った久米島は短くお客様も沢山乗っているので自重が重く離着陸のパフォーマンスに気を使います。

久米島とか他には白浜もそうなんですけれども、ちょっとでも風の方向が悪かったりとか、なんせ観光地なのでお客さんが多く、しかも天気があまりよくないと燃料も沢山積んで飛ぶので、重量が重い場合の短い滑走路は離着陸のパフォーマンスがギリギリなんですよね。その場合は離陸できるためにいろいろな装置を使って工夫することもあったり。

色々と考えさせられる難しさや、雪や台風での離着陸テクニック面での難しさ、と様々なので一概に言えないですね。

髙田:
さまざまなテクニックが必要なのですね。

藤さん:
そう色んなテクニックがあって、どこも難しいっていえば難しいですね。

髙田:
ありがとうございます。最後の質問です。パイロットとしておすすめの空港はありますか。

藤さん:
おすすめの空港ですか。
おすすめの空港、最近は羽田の南風で夕方の着陸が新宿御苑など都心の真上を飛んでいくんです。
やはり天気が良い時とかは綺麗で、南風でもそのルートを飛行するのは時間帯で決まっていて午後の3時から7時までの間の3時間だけの運用です。なのでこれからの冬では日没に掛かったりとかすると、夜景が凄く綺麗ですし、東京タワーもスカイツリーも見えます。あと日中帯であれば、新宿御苑や皇居など見えて、ここ飛んでいいの?って思うようなところを飛行するので是非おすすめです。

髙田:
飛行機に乗るのが楽しみになってきました。窓側の席を予約しなければなりませんね。本日はお忙しいところたくさんのお話をどうもありがとうございました。

藤さん:
ありがとうございました。

次回、卒業生のインタビュー記事は<2023年2月1日>に予定しています。

こちらのページでは、先生や卒業生の近況、また桐朋生にとって懐かしい方々を紹介いたします。
桐朋学園初等部同窓会は6,571名(2021年度3月時点)の会員から構成され、卒業生間の親睦と母校への貢献を目的に活発な活動をおこなっています。
卒業後も桐朋の教えをもつ仲間として、深い繋がりをもっていることが桐朋学園初等部同窓会の特徴です。

同期生同士の横の繋がりだけでなく、クラブ活動や課外活動等によって形成された先輩・後輩の縦の繋がりは、社会人になってからも大きな心の支えとなり、様々な場面で活かされ、その関係は一生のものとなっています。

「桐朋との繋がり」をきっかけに、更なる同窓生の交流が深まるよう、これから繋がりの深い方々を紹介していきます。