【Vol.22】桐朋との繋がり -47期 椎名慧都(けいと)さん 後編-

ゲスト    :47期 椎名慧都(けいと)さん(以下、椎名さん)
インタビュアー:桐朋学園初等部同窓会 会長 坂口佐代子 (以下、坂口)

 

椎名慧都さんインタビュー後編です。
前回のインタビュー<中編>はこちら
前々回のインタビュー<前編>はこちら

坂口:
素敵なお話ですね。次の質問です。
慧都さんが舞台女優さんになろうと思ったきっかけは何だったですか。

椎名さん:
何か大きなきっかけがあったわけではないんですけど、元々演劇に触れる機会が多い環境でしたので、きっかけは様々なところにあったのだと思います。一番古い記憶では、幼稚園のお遊戯会で桃太郎をやった時のことです。その時に私は”桃太郎”役をやりたいと思っていたんです。幼稚園の先生は「桃太郎は男の子なんだよ」って言っていたんですけど、それでも私は「どうしてもやりたい」って言って、やらせてもらったんです。それがとっても嬉しくて、幼稚園生なりに毎日セリフの練習をしてましたね。
それが今でも、幼稚園のお友達のお母さんに会うと「桃太郎の慧都ちゃん」って覚えてくれたりするんですね(笑)今想うと一番最初に演劇を好きになるきっかけは”桃太郎”だったかもしれないですね。

坂口:
一番最初は桃太郎なんですね(笑)

椎名さん:
幼稚園のお遊戯会なので、桃太郎も7人ぐらいいたんですよ(笑)
男の子の中に女の子一人、私がいました(笑)

坂口:
女優さん以外になりたい職業はあったんですか?

 

椎名さん:
ありました。大学を演劇科に行くか、別の学科いに行くか迷った時に、演劇の道でなかったら、保育士になりたいなと思っていました。子どもがすごく好きなので。一昨年から劇団では子ども劇場というのを始めて、子どもに向けた演目にも取り組んだりしています。将来のことも考えると演劇は不安な面もありましたから、保育士とはちょっと迷ったところですね。でも好きな事って考えた時にやっぱり演劇の道に進みたいと思いました。

坂口:
これまでに苦労や挫折などはあったんですか?

椎名さん:
大学の時に、中国で行われた世界演劇大学連盟フェスティバルで公演をしたことがありました。世界から集まった各国の演劇大学が、決められた課題の同じ演目を持ちよって、公演を行うのですが、私達の年は「ロミオとジュリエット」で、私はジュリエットを演じました。

最終日に参加国の各大学で賞が決まるんですけど、周りの先生方からは「慧都が賞を獲るだろう」って言われていて、海外の方たちからもとても評価してもらっていたのですが、その時の私としては、納得のいかないとても悔いが残るような公演になってしまっていたんです。その時に、これで賞を獲ってしまったら私は演劇を続けることができないかもしれない、って思ったんです。それは自分の感覚とのギャップへの戸惑いもありましたし、自分のベストと思えない様な演技で獲ってしまってはこれから先のことを考えた時にとても不安になっていました。でも結果、賞は獲れなかったんです。

ショックな想いも少しはありましたし、周りの人達はとても私に気遣ってくれちゃっている状況だったんですが、その時、自分の感覚に間違いは無かったのだととホッとしている自分がいました。あ、私演劇続けられるって。だからこの経験は逆に私にとって自信になっていました。そして今も全ての公演で自分のベストを目指したい。という気持ちになっていると思います。

坂口:
ポジティブなんですね。

椎名さん:
(笑)ポジティブなのかな…。

坂口:
すごいですよね、その時審査員と同じ目線で自分を見ていたというか、客観的に自分の演技を見ることができたんですね。もしかしたら、日常の慧都さんと舞台に立っている慧都さんはまったく違うのかもしれないですね。

椎名さん:
それは言われますね。舞台を観てくださった方と普段会うとびっくりされますし、普段を知っている方が舞台を見て下さるとギャップに驚いてますね。

言われてみるとやっぱり自分はポジティブかもしれません(笑)学生時代、後輩の私がヒロインをもらった時に、周りの逆境もあり、自分自身に嬉しさよりも不安な想いが強くありました。でも今思い返せば、それがあったからこそ「もっとやってやる」って思えて、それがエネルギーの源になっていました。ポジティブになれるのは、間違いなく周りで支えてくれる方々がいること、一人じゃないと思えることが大きいんだと思います。私にはこんなに応援してくれる人たちがいるから、大変なことや辛いことがあっても、私は大丈夫って思わせてもらえるんです。その人たちをおもって進むことができています。

坂口:
ポジティブですね!
自分自身に問いかけることってすごい難しいと思いますし、やっぱり周りと比較してしまいますからね。慧都さんは本当にポジティブですね!

最後に今後の活動についても教えていただけますか。

椎名さん:
はい、今年の12月13日に公開される周防正行監督の映画に出演をさせていただきます。また舞台もありまして、12月25日から28日、世田谷シルクという劇団の「青い鳥」に出演します。

映画「カツベン」は、活動弁士のお話でなんですけど、実は私の曾祖父(山野一郎)は活動弁士だったんです。なのですごいご縁を感じるとともに、このような機会をいただけたことは、とても光栄に思っています。

映画の中には、オリジナルの劇中映画が何本か出てくるんですけれども、その中で物語に関わってくる「火車お千」という周防監督オリジナルの劇中映画の中でお千”役をやらせて頂いています。激しい役で殺陣のシーンもありました。
殺陣の経験は学生時代にあったのですが、このお話をいただいた時には、大学の同期で殺陣をメインに活動をしている友人に手伝ってもらいながら、改めてみっちり稽古をしました。

坂口:
舞台上やスクリーンの中ではわからないのですが、女優さんや役者さんって見えない努力がすごいんですね。

椎名さん:
そうですね。毎日稽古をしていると、周りから一体何やっているの?と聞かれちゃうんですよね。

坂口:
見えない努力をされているのは外からはわからないですからね。絶対に見に行きます!慧都さんの舞台や映画を桐朋生の皆さんにも見ていただけるよう同窓会サイトでもたくさんお知らせしますね!
毎日頑張っている慧都さん、最終的に目指す女優さんというのはどんな形ですか

椎名さん:
大きく言ってしまうと、人と人を繋ぐ存在となる女優として活動していきたいというのが常に私の中にあります。これは先ほどお話した、海外の演劇フェスティバルでの他国の学生との交流という貴重な経験が今でも私の中に残っているのだと思います。その時、国と国がどんな関係であろうと、演劇は壁を越えて、人を繋げることができるのだと強く感じました。これからは演劇人として多くの舞台や映画、様々な場で経験を積み、芯の強い女優になりたいです。

坂口:
素晴らしいですね。これからも頑張ってください!本日はありがとうございました。

椎名さん:
ありがとうございました。

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次回、卒業生のインタビュー記事は<2020年1月17日>に公開を予定しています。

こちらのページでは、先生や卒業生の近況、また桐朋生にとって懐かしい方々を紹介いたします。
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卒業後も桐朋の教えをもつ仲間として、深い繋がりをもっていることが桐朋学園初等部同窓会の特徴です。

同期生同士の横の繋がりだけでなく、クラブ活動や課外活動等によって形成された先輩・後輩の縦の繋がりは、社会人になってからも大きな心の支えとなり、様々な場面で活かされ、その関係は一生のものとなっています。

「桐朋との繋がり」をきっかけに、更なる同窓生の交流が深まるよう、これから繋がりの深い方々を紹介していきます。