【Vol.5】桐朋との繋がり -千葉 裕子先生<前編>-

ゲスト    :千葉裕子 先生 (以下、千葉先生)
インタビュアー:桐朋学園初等部同窓会 会長 坂口佐代子 (以下、坂口)

 

坂口:
千葉先生、本日はお忙しい中、お時間を頂きましてありがとうございます。
本日は桐朋学園初等部同窓会サイトのインタビューをお受けいただきましてありがとうございます。
どうぞよろしくお願いいたします。本日は三つの質問させて頂きます。
早速ですが、先生と学校との繋がりは、どのようなきっかけがあったのでしょうか。

千葉先生:
私の実家は千歳烏山です。
小さい時から、人と関わることが好きだったようで、まだ幼稚園に行ける年齢ではなかった頃、朝になると、垣根の向こうを通勤通学する人達に向かって、自宅の窓越しに声をかけていたのです。「おはよう!」「いってらっしゃい!」「頑張って」という調子で。両親がその様子を見て「この子は家の中に置いていてはいけない。」と思ったのか、近所の保育園にお願いして入れていただいたのです。

その保育園で、他のお友達や先生など、人と関わることを経験し始めました。その後、今度は幼稚園を探すことになり、その頃は幼稚園自体が多い状況ではなかったので、自宅に近い幼稚園と言えば、桐朋幼稚園。迷うことなく入園試験を受けることになりました。
桐朋とのご縁の始まりはこんなことでした。入園試験という意識は全くなく、とにかく、園庭や教室で遊ぶだけという時間でした。お友達と遊べるのが嬉しくて楽しくて、それだけでいれていただいた桐朋幼稚園です。

坂口:
先生は幼稚園では何期生ですか?

千葉先生:
私は、小学校が9期になります。たまたま、私と桐朋小学校は同じ歳なのです。
さらに言うと、桐朋小学校の第1回目の入学式と私の誕生日が同じであることを後から知りました。幼稚園は、当時は大場先生と塚越先生、そして、竹林先生が新任でいらっしゃいました。さすがに歴史を感じますね。

坂口:
ずっと桐朋なんですね。
先生にとって、桐朋学園初等部はどのような想いがあるのでしょうか。

千葉先生:
先ず、幼稚園では、毎日色々な友達と会えて、一緒に遊べることが楽しくて休みたいと思ったことがありませんでした。帰り際に口にいれていただいた肝油、ディズニーさながらのアイドル犬「レディー」の世話、など良く覚えています。卒園式の時に、園長先生いらした生江義男先生が「おめでとう」と、厚いふくよかな手で頭をトントンとやって下さった、その手の感触を今でも忘れられないです。

そのまま小学校に入学し、1,2年は東組で、小松映子先生が担任でした。小松先生は、キリっとされた素敵な先生でした。私がとても活発な子であることを認めて下さって、休み時間になると必ずグランドに出て遊んだのですが、「お集まり!」という声がかかるまで、ずっと遊んでいて、小松先生はいつも穏やかに優しく見守ってくださいました。図工を担当された園一彦先生が、私達が描いた絵に金賞や銀賞をつけてくださる、そのようなことも思い出に残っています。因みに私は東京タワーの絵を描いて金賞をいただきましたが、そのような評価が励みになったり、嬉しかったりで、自分が素のままで過ごせる入口がその頃でした。

とても自分に影響があったのは、やはり、3年生から6年生までの担任でいらした丸木シズ子先生です。厳しいのですけれど、先生から言われると納得したし、次はこうしようという気持ちが生まれました。子どもたち、一人ひとりを良く見てくださいました。3年の初めの頃、私は発言がなかなかできずにいました。その様子を先生は汲んで下さり、私の引き出しを少しだけ引いて出してくださったのです。目があったとたん、丸木先生は私に発言を促しました。私が答えたことを先生は褒めてくださいました。毎日、さよならをする前の帰りの会のところで、先生は、その日あったことで皆に知ってほしいことを発表するようにおっしゃいました。マイナスのことや、文句や告げ口ではなく、良いところや良いことを発表しなさい、というのです。そして、発表すると先生は「褒めてあげましょう。」と皆で拍手をします。私も、「今日は、雨で階段が濡れていたので、小早川さんと雑巾掛けをしました。」と発表したことがあり、その時もらった拍手が嬉しくて、それがきっかけで、何か良いことができないか、と考えて行動するようになりました。単純にそのような仕掛けに乗ったということです。積極性がつきましたね。

また、私は運動好きで活発なところはさらに磨きがかかっていきましたが、3年の初めの頃は教室ではおとなしいという内気な子どもでした。とにかく、帰りの会での「褒めてあげましょう」の時間がきっかけになり、私の中の積極性が引き出されたと思います。

そして、一番自分に自信がついたのは、3年生の時に50m走でタイムを計った時のことです。男の子達よりもタイムが良かったことで、見ていた男の子達が「嘘だ。そんな速いわけない。」と言うものですから、私は、丸木先生に「この人たちの前でもう1回走るので、タイムを計ってくれますか。」とお願いして走ったところ、1回目と同じタイムだったのです。見ていた男の子達も今度は何も言わずに、私が走ることが得意であることを認めてくれたのです。それからの運動会では、ずっとリレーの選手に選ばれ、走ることに自信が持てるようになりました。

次回、後編を<4月20日>に掲載を予定しています。

こちらのページでは、先生や卒業生の近況、また桐朋生にとって懐かしい方々を紹介いたします。
桐朋学園初等部同窓会は6,094名(2017年度3月時点)の会員から構成され、卒業生間の親睦と母校への貢献を目的に活発な活動をおこなっています。
卒業後も桐朋の教えをもつ仲間として、深い繋がりをもっていることが桐朋学園初等部同窓会の特徴です。

同期生同士の横の繋がりだけでなく、クラブ活動や課外活動等によって形成された先輩・後輩の縦の繋がりは、社会人になってからも大きな心の支えとなり、様々な場面で活かされ、その関係は一生のものとなっています。

「桐朋との繋がり」をきっかけに、更なる同窓生の交流が深まるよう、これから繋がりの深い方々を紹介していきます。