【Vol.4】桐朋との繋がり -宮原 洋一先生<後編>-

ゲスト    :宮原洋一先生 (以下、宮原先生)
インタビュアー:桐朋学園初等部同窓会 会長 坂口佐代子 (以下、坂口)

 

宮原先生へのインタビューの後編です。

坂口:
素敵なお話ありがとうございます。
続いての質問ですが、既に社会で活躍されていたり、これから活躍される”桐朋っ子”に向けて一言頂けますか。

宮原先生:
今お話させて頂いたこととまったく同じことになりますが、
子どもの遊びは本当に自分たちがやりたいことを夢中になってやっていますよね。
その時その時に、砂場でトンネル掘ったり、水を持ってきたり、寒いのに裸足になって本当に夢中になって遊んでいます。

社会に出て色んな仕事があるけれど、仕事の原点というのはそこにあると思っています。
我を忘れて夢中になり何かを作りだすことの楽しさ。
原点はそこにあるのですが、でもなかなか現実的にはやりたいことができるってことは難しいことですよね。だから、今の仕事が理想通りにはもちろんいかないと思いますが、ルーティンにはまらないで、丁寧に少しずつでいいので今しなければならないことを続けていけば、やがて道は拓けていくと思います。

丁寧にです。ひとつひとつ小さなことをやっていくことです。少しずつでいいので丁寧に。
それがルーティンにはまらない、ひとつの大事なやり方かなと思います。

私が初めて担任になった時の卒業生も63歳近くになりますが、卒業生の中にはエッと思うようなポジションにいる人が、今までの仕事を定年前に、パッと辞めてしまって自分のやりたい仕事を始めてしまう人とか、定年まで勤めてから今までの仕事にまったく関係の無い資格を取って、新しく仕事を始めた人がいます。そういう意味で、絶えず生きることに自由であること、それをお互いに大切にして生きていけたらすごくいいと思います。

坂口:
いいお話をありがとうございます。

宮原先生:
でもやっぱり、嫌な仕事を続けることは身体によくないですね。

坂口:
時には、挫折や苦しかったり悲しかったりすることもあるかと思いますが、
それを乗り越えるにはどうしたらいいですか。

宮原先生:
当然、そういったことはありますよね。
そういう時は、友達同士で話せる仲間がいることが大事ですね。
それこそ、小さい時にたっぷり遊んで、蓄えて自分の身につけてきたポテンシャルエネルギーみたいなものが、砕けそうなになる自分を、無意識のところで自分を支えていくパワーになるのではないかなと思います。
子どもの頃に仲間と一緒にいっぱい遊んだことや夢中になって何かをやったことなんかが無意識のところにあって、それが苦しい時に支えてくれる力になってくると思います。私はそう思います。

今、私たちがここにあるってことは、代々命を繋いできているってことですよね。
命を繋げるのに本当に大変な時代もあったと思います、飢饉や災害があったりして生きるか死ぬかのそうい時代を先祖たちが頑張って生きて、命を繋げてきているわけですね。私たちはその命のバトンを受け取っているわけです。

だから、私たちの命はずっと代々繋がってきた命のその中にあると思うとそれはとてもすごいことです。しかも、私たちは世界に同じ人は二人といないオンリーワンですから、これもとてもすごいことです。

自信を無くしてしまったり、生きることが辛くなる人達がいっぱいいると思いますが、
でもそうやって今命のバトンを受け取っているということと、間違いなくオンリーワンであること、
つまりかけがえのない一人であるという事実を自覚することは、生きる力になると思います。

坂口:
ありがとうございます。
元気が出るお話と桐朋小にいて良かったなという自覚を今改めて思いました。ありがとうございます。

宮原先生:
最後にもう一つだけ、今の時代に生きている人にとって、これからはAIの時代だとか、温暖化や
原子力の問題もあります。そういった中で「人間にとって幸せとはなにか」という、この大きな命題について、是非、それぞれの生きる場所で考え続けて欲しいと強く願っています。

今やこれなしでは、科学の発達や産業の発達など全部含めて極めて危険なことですらあると思っています。
つまり、人間にとって何が幸せかを考えないで、便利であるとかこれでお金が儲かるとか、そういったことで事を進めていくのが人間にとってどうなのか、という大命題です。

人間が働くということはどんな意味があるのかということでもあります。それを機械に変えてしまっていいのか、ということでもあります。原子力では、一度暴走すれば人間の手に負えないことは、この間の東日本大震災で非常によくわかっていますよね。

だから科学が発達していくということ、その成果を使うことは、必ずしも人の幸せには結び付かないということです、でも短絡的にそれだからどうだっていう話ではなくて、人間にとって幸せとはどういうことなんですか、ということをみんなで考え続けたいものです。

坂口:
宮原先生にとっても「幸せとは」という答えは出ないものですか。

宮原先生:
わからないところが多々ありますね。
科学が進歩して、例えばAIとの関係を考えてみても、一体どういった関係を作るのが人間にとっての幸せか。これは日々の具体的な日常の問題ですから、それについても絶えず「幸せとは」という問いを持ちながら、新しいテクノロジーとの付き合い方も考えていかなければならないと思っています。

坂口:
桐朋っ子に向けて、いいお話をありがとうございました。
最後に次回のゲストを宮原先生の繋がりでご紹介頂きたいと思います。

宮原先生:
生粋の桐朋っ子で、現中高校長の千葉裕子先生をご推薦いたします。
私が桐朋に着任した時に、千葉先生は6年生でして、児童会などで非常に活発に活動している子どもでした。きっと面白いお話が聞けると思います。

坂口:
本日はありがとうございました。次回は千葉先生にお話をお伺いしたいと思います。

宮原先生:
ありがとうございました。

次回は千葉先生にインタビューをして、色々なお話をお伺いしたいと思います。
次回の掲載は<3月20日>に予定しています。

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